2026年8月7日付の読売新聞朝刊「論点スペシャル」に、トリオ・ジャパン代表の青山のコメントが掲載されました。今回の特集テーマは、「臓器あっせん 課題と対策」です。不透明な海外臓器移植を巡る事件を踏まえ、臓器移植を取り巻く課題と、今後わが国に求められる対策について、医療、法律、患者・家族支援の立場から意見が紹介されています。青山は、心臓移植を受けた子どもの家族であり、長年にわたり移植を待つ患者さんやご家族の支援に携わってきた立場から、次のような問題意識をお伝えしました。
臓器提供と臓器移植は、人から人へと命がつながれていく尊い医療です。一方、不透明な臓器あっせんを巡る事件が報じられることによって、移植医療全体に対する不信感が生まれたり、「臓器を奪う医療」であるかのような誤った印象が広がったりすることを、私たちは強く懸念しています。不正や不透明なあっせんについては厳正に対処しなければなりません。しかし、その問題と、適正な制度のもとで行われる臓器提供・移植医療とは、明確に分けて考える必要があります。
国内には、移植を必要としながら、提供される臓器を長期間待ち続けている患者さんが数多くおられます。記事では、日本臓器移植ネットワークの情報として、2026年6月末時点で心臓移植を待つ患者さんが786人に上ることや、心臓移植の平均待機期間が約4年半に及ぶことも紹介されています。待機期間は、単なる「順番待ち」の時間ではありません。患者さんとご家族は、病状が悪化するかもしれない不安を抱えながら、いつ訪れるか分からない移植の機会を待ち続けています。残念ながら、移植にたどり着くことができないまま亡くなる方もおられます。トリオ・ジャパンでは、海外で心臓移植を受ける子どもたちへの支援をはじめ、国内で移植を待つ患者さんやご家族の交流支援、大学や高校での講演、移植医療に関する啓発活動などに取り組んできました。
臓器取引や移植ツーリズムについては、2008年に採択された「イスタンブール宣言」において、その防止に向けた国際的な原則が示されています。トリオ・ジャパンも、不透明な海外移植や、患者さんが多額の費用と大きな危険を背負って海外へ渡らなければならない状況が、将来的になくなることを願っています。そのためには、規制を強化するだけでは十分ではありません。国内における臓器提供の体制、移植を実施する医療機関の体制、患者・家族への情報提供や意思決定支援を、一体的に充実させていく必要があります。
青山は記事の中で、娘の海外心臓移植のために募金活動を行っていた当時を振り返り、「世の中の無関心が、私にとって最大の敵だった」との思いを語っています。臓器提供は、決して一部の患者さんや医療者だけの問題ではありません。私たちの誰もが、ある日突然、移植を必要とする立場になる可能性があります。同時に、自分自身や大切な家族が、臓器を提供する立場になることもあります。まずは家族や身近な人と、命のこと、臓器提供のこと、自分ならどのような選択をするのかについて話してみる。その小さな対話の積み重ねが、移植を待つ患者さんを支える社会への第一歩になると考えています。政府や国会には、不透明な海外移植への対策や国内医療体制の整備に加え、臓器提供を希望した方の意思が確実に尊重され、医療につながる仕組みについても、さらなる議論を求めてまいります。移植を待つことが、患者さんやご家族にとって孤独や絶望を抱える時間になってはなりません。
トリオ・ジャパンはこれからも、移植を待つ患者さん、移植を受けた方、そしてそのご家族に寄り添いながら、誰もが臓器提供と移植医療について正しく知り、考え、語り合うことのできる社会を目指して活動を続けてまいります。
