2026年11月7日(土)、東京・銀座にて「トリオ・ジャパン同窓会2026」を開催いたしました。”移植医療を真ん中に置いて、立場や領域の異なる人々が集い、思いを重ねる” 今年の同窓会では、特別なプログラムを設けることよりも、ご参加くださった皆さまが互いの言葉に耳を傾け、一人ひとりの思いを受け止めながら、丁寧に対話を重ねていく時間を大切にしました。レシピエントとそのご家族、ドナーのご家族を中心に、移植医療に携わる医療者、行政職員、メディア関係者、看護学生、募金活動を支えてくださった方々など、さまざまな立場の皆さまにご参加いただきました。

臓器を提供された方のご友人は、突然訪れたあの日の出来事を振り返りながら、当時の胸の内を語ってくださいました。生前、臓器提供の意思表示について話し合ったことがあり、ご本人の意思もわかっていた。「それでも、ドナーとして逝ってほしくなかった……」。その言葉には、大切な友人を失った深い悲しみと、ご本人の意思を尊重したいという思いとの間で揺れ動いた心の揺らぎがありました。言葉では尽くせない葛藤。臓器提供は、決して美しい言葉だけで語れるものではありません。その背景には、かけがえのない人を思うご家族やご友人の、複雑で切実な思いがあります。その一つひとつに、私たちは深い敬意をもって向き合わなければならないと、改めて心を新たにしました。
心臓移植を受け、その後お母さんとなった女性は、出産に至るまでの道のりを語ってくださいました。妊娠・出産に備えた免疫抑制剤の調整など、さまざまなご苦労があったそうです。何よりも、ドナーに支えられた「いのち」が、新たな「いのち」へとつながっていく。その素晴らしさを、会場の皆さまと共有することができました。
心臓移植を受けた少年は、柔道に夢中な日々を語ってくれました。感染予防のため、マスクを着けながら練習に励んでいるそうです。そして最後には、ドナーへの感謝の思いを力いっぱい伝えてくれました。
ある少女は、かつての闘病生活を振り返り、胸の内を打ち明けてくれました。「病気だった自分がお父さんとお母さんを独り占めしてしまい、きょうだいに寂しい思いをさせてしまったのではないか…」そんな、きょうだいへの申し訳なさをずっと胸の内に抱えていたことを、涙ながらに語ってくれました。その言葉は、今なお残る「きょうだい児ケア」の課題を、改めて私たちに考えさせてくれるものでした。
また、肝臓移植から20年が経過した男性と、移植後31年目を迎えた女性の姿もありました。お二人とも実にパワフルでしたが、移植後の人生は、決して平坦な道のりばかりではなかったことでしょう。それでも、長い年月を重ねながら、自分らしく、力強く生きていく。その姿そのものが、多くの人にとって希望であり、励ましとなったのではないでしょうか。

元気になったレシピエントたちの姿を目の前にしながら、臓器提供施設の医師は、かつて懸命に治療にあたり、それでも救うことのできなかった、一つひとつの「いのち」に思いを馳せていらっしゃいました。そして、移植を受けた方々に向けて、こう語りかけてくださいました。「私が生きていていいのだろうか……」どうか、決してそのようなことを思わないでほしい。あなた方の中にいる「いのち」、ドナーと一緒に、力強く生きてほしい。それこそが、私にとっても救いになります。その言葉には、救命の最前線で命と向き合い続けてきた医師だからこその、深い祈りと人間愛が込められていました。ドナーとレシピエントの二人三脚でつくる、尊い命。移植後の人生を歩むレシピエントを、社会全体で温かく見守り、支えていくこと。その大切さを、改めて心に刻む時間となりました。

移植医療には、医学や医療技術の進歩だけでは乗り越えられない、さまざまな社会的障壁が今なお存在しています。移植を受けた後も続く日常生活、学び、就労、社会参加、そして周囲の理解や支援のあり方。医療現場だけでは見えにくい課題が、移植者やそのご家族の人生の中には数多くあります。さまざまな壁に直面し、ときには悩み、立ち止まりながらも、自分自身の人生を切り拓いてこられた移植者の皆さん。その言葉や経験の中には、移植医療を取り巻く多くの課題を解決するためのヒントが、数多く散りばめられていました。彼らのこれまで歩んでこられた人生そのものが、よりよい移植医療と社会をつくるための、大切な知恵に満ちているのだと感じ入りました。

移植医療を支えるものは、優れた医療技術や制度だけではありません。その根っこには、いつの時代も変わらず、「人間愛」があります。それぞれの立場や領域は異なっていても、その根底にある「人を思う気持ち」は、変わることなく、人から人へとつながっていくのだと思います。日本の臓器移植医療には、今なお多くの課題があります。しかし、立場や領域の異なる人々が、それぞれの「人を思う気持ち」を持ち寄り、互いの声に耳を傾け、その思いを重ねていくことができたなら、日本の移植医療はきっと、もっとよくなる。今回の同窓会は、そう信じさせてくれる、温かな希望に満ちた空間でした。トリオ・ジャパンは、これからも移植医療の根っこにある「人間愛」を握りしめながら、活動を続けてまいります。改めまして、ご参加くださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。また皆さまと、笑顔でお会いできますように。
